パンの主役は『小麦粉』です。
小麦粉には、たくさんの種類があります。
パンに向いている小麦粉の中にも種類があり、小麦粉が違えば味や食感が変わります。
パンを作るようになり、美味しいパンにたくさん出会いました。
“せっかくパンを手作りしているのだから、自家製小麦粉で美味しいパンを食べたい!”
と思うようになりました。
小麦栽培の知識はゼロ、
農作業の経験ゼロ、
花瓶の花もサボテンですら枯らす…
そんな私が、土作りから小麦を栽培し、実際にパン作りまでを達成することができました。
パンが大好きで、小麦を栽培して自家製小麦粉でパン作りをしたい!という方に少しでも力になればと思い、
小麦の栽培からパン作りまでをまとめました。
今回の記事では、
- 場所選び
- 種子選び
- 必要な道具と肥料
- 工程
についてまとめています。
『小麦栽培の準備』にあたります。
場所選び
どんな場所で小麦を栽培できるの?
私が実際に小麦を栽培した場所は、
- 近畿地方
- 風通しの良い
- 水はけの良い耕作放棄地
- 面積約1a(100㎡)
知人で耕作放棄地の土地があるということで小麦栽培に貸していただけることになりました。
「自分の住んでいる地域で小麦粉は栽培できるだろうか?」
と悩むと思います。
私が栽培した近畿地方で小麦栽培をしている場所は、ほとんどありません。
しかし、小麦は、とても強い植物なので全国で栽培が可能です。
花瓶の花ですら枯らしてしまう私が小麦を栽培できたのは、
小麦は雨水だけで育つからです。
野菜作りや米作りは、水やり・水の調整がとても難しいと思います。
小麦は雨の少ない地域で育てられることが多いように、雨の水だけで育つのが特徴です。
逆にいえば、雨が多い地域や水はけの悪い土地は小麦向きではありません。
ただ、日本では、一年中雨が降る地域もなく、小麦の栽培期間も10月から6月とちょうど梅雨の時期も外れます。
なので、全国的に小麦の栽培は可能となります。
栽培面積はどれぐらい必要?
「1㎡ = 1.5斤食パン0.5本」
が目安になると思います。
注!私が栽培して収穫できた量から計算しているので、栽培方法によって収穫量は異なります。
実際の収穫量をまとめておくので参考にしてください。
私が実際に収穫できた小麦の量は、約80キロ(水分含む)でした。
1キロの小麦を製粉し、特等粉※1になったのは、250グラムでした。
ふすまとして残ったのは、約100グラムでした。
このふすまは米栽培の肥料として使いました。
その他、約650グラムは真っ白ではなく、ふすまが混じった小麦粉になりました。
特等粉をパンに使用すると、
小麦が80キロあったので、約20キロの小麦粉ができたことになります。
20キロの小麦粉で1.5斤の食パンは、50本ほど作ることができます。
つまり、
「1a(100㎡)= 1.5斤食パン50本」
「1㎡ = 1.5斤食パン0.5本」
ということになります。
1㎡は、さすがに小さく、パンも作れなくなります。
1aは、正直大変でした。
「10㎡ = 1.5斤食パン5本」
ぐらいが家庭で栽培するには適しているのではないかと思います。
※1
特等粉とは、
お店でよく販売されている真っ白な小麦粉のことです。
詳しくは、別記事にまとめます。
場所選びのまとめ
- 全国的に栽培が可能
- 水はけの良い場所
- 「1㎡ = 1.5斤食パン0.5本」を参考に!おすすめは「10㎡ = 1.5斤食パン5本」
種子選び
私が栽培した種子は『ミナミノカオリ』です。
『ミナミノカオリ』は、温暖な西日本でも栽培が可能な品種です。
私が栽培した時期は、『ミナミノカオリ』の次世代に当たる『せときらら』が普及し始めていましたが、種子の販売が行われておらず、購入することができませんでした。
少し性質は、劣る品種ではありましたが、『ミナミノカオリ』を栽培することに決めました。
小麦の種子は、たくさんの種類がありますが、西日本(関東以南)で栽培が可能な種子は、限られています。
以下に、種子についてまとめておきます。
西日本で栽培する場合の参考にしてください。
西日本(関東以南)で栽培可能な種子について
現在、西日本で栽培が可能な小麦の種子は、4種類あります。
- ニシノカオリ
- ミナミノカオリ
- せときらら
- はるみずき
ニシノカオリ
1999年に生まれた品種で、西日本で初めてのパン用小麦です。
蛋白質含有量が高く、
菓子パンやフランスパンに適しています。
栽培適地は、関東以西から九州南部です。
ミナミノカオリ
2006年頃に生まれた品種で、西日本で栽培出来るパン用の小麦です。
ニシノカオリに比べて、製パン性がかなり改良されました。
蛋白質含有率が高いので、
パン用だけでなく、中華麺や素麺、醤油醸造原料にも適しています。
やや早生、茎が短く強いので麦が倒れにくい性質です。
赤かび病にやや弱いので、赤かび病の麦はしっかり取り除き、適正時期に収穫することが重要です。
パン用の小麦にするためには、タンパク質含量を上げる必要があるので、肥料をたっぷりとあげる栽培が必要になります。
※タンパク質含有量は、肥料の量で調節します。製パン用の強力粉は、タンパク質含有量が11%以上です。
栽培適地は、西日本の平坦地です。
せときらら
2012頃に生まれた品種で、温暖地向けのパン用の小麦です。
『せときらら』を開発された背景として、
『ニシノカオリ』…パン用の輸入小麦に比べて製パン性が劣り、日本めん用小麦品種に比べて収量が低いという問題があります。
『ミナミノカオリ』…製パン性が向上したが輸入小麦には及ばず、赤かび病や穂発芽に弱いという問題があります。
これらの欠点を改善するために『せときらら』の開発が行われました。
グルテンが強く製パン性に優れます。
もちもち・しっとりした食感のパンが作れます。
条件が良ければ、輸入のパン用小麦に近い適性が得られるようになりました。
赤かび病の抵抗性に優れています。
『ミナミノカオリ』と同じく、タンパク質含量が低くなると製パン性が低下するので注意が必要です。
栽培適地は、関東以西の平坦地です。
はるみずき
2018年頃に生まれた品種で、西日本向けのパン用小麦として今後普及が期待されている品種です。
『はるみずき』が開発された背景として、
小麦は、実が多いとタンパク質含有量が高まりにくいという性質があります。
『せときらら』は、製パン性に優れていますが、実が多いので、タンパク質含量が高まりにくくなり、製パン性が優れないことがあります。
また、茎が高いので、倒れる危険もあります。
実も多く、タンパク質含有量も安定して多く、倒れにくい品種が求められるようになり開発が行われました。
収量は、『せときらら』より少なくなりますが、『ミナミノカオリ』よりは多く収穫することができます。
タンパク質含有量は、『せときらら』より高くなり、
茎の長さが短く倒れにくい品種です。
穂発芽性※1や赤かび病の抵抗性は、『せときらら』と同程度です。
※1穂発芽性とは
小麦の収穫時期に雨が降り続いた場合に、種子が穂についたまま発芽する現象のことです
種子の購入
種子を決めたら、購入を行います。
小麦の種子は、農協などで販売されていません。
私の場合は、京都にある『株式会社のうけん』で購入しました。
90品種以上の種籾(種もみ)の販売(にこまる・にじのきらめき・ミルキークイーン・陸稲(りくとう)・黒米・赤米・飼料稲など…
現在は、
- 令和元年産の『ニシノカオリ』
- 令和元年産の『ミナミノカオリ』
- 平成30年産の『せときらら』
が購入可能です。
購入する種子の量
1a(100㎡)で、1Kgを購入しました。
1Kgのうち、全ての種子を使わずに畑全体に撒くことができました。
10㎡ = 種子100g
を目安に購入を考えてください。
必要な道具と肥料
必要な道具
土作りに必要な道具
- スコップ
- 鎌(カマ)
- クワ
- 三又(ミツマタ)
- 耕運機
栽培面積が広い場合は、クワだけで畑を耕すのはとても大変です。
借りることができるなら、耕運機を使うと時短になります。
購入する場合、100㎡以下の面積で耕運機の価格は5万〜10万になります。
クワや三又は、畝作りで活躍します。
消毒・薬に必要な道具
- タライ
- ゴム手袋
- 霧吹き or ジョウロ
- マスク
タライは、種子の選別・消毒に使用します。
赤カビ病対策に殺菌剤を撒きます。
その際に、ゴム手袋以下の道具が必要となります。
防鳥に必要な道具
- 防鳥テープ(防鳥紐)
- 防鳥ネット
麦栽培の強敵は、何と言っても『鳥』です。
もうすぐ収穫という前に、大量にやってきて食べていきます。
しっかり防鳥対策を行うことが必要です。
収穫〜製粉に必要な道具
- 千歯扱き(せんばこき) or 足踏み脱穀機
- 手動ふるい機
- 唐箕機(とうみき)
- 製粉機
収穫は、鎌で刈り取ります。
その後の作業としては、
脱穀 → ふるい → モミ殼取り → 製粉
【脱穀】
収穫量が少ない場合は、千歯扱きで脱穀することができます。
こちらは、割り箸で自作することができるので、購入する必要はありません。
収穫量が多い場合は、千歯扱きでは日が暮れます。
足踏み脱穀機があると便利です。
安くても4万円前後になるかと思います。
米農家さんは、昔、手動で脱穀する際に使用していたので、もし近所に米農家さんがいれば持っている可能性があります。
【ふるい】
脱穀したら、実以外にも茎や石が混じっているので、ふるい機でふるいにかけます。
【モミ殻取り】
モミ殻を取るには、唐箕機が必要となります。
こちらは、扇風機とダンボールで代用できるので購入する必要はありません。
【製粉】
製粉は、石臼で行なっていましたが、正直大変です。
製粉機は、麦だけでなく米やその他穀物も製粉できます。
今後穀物を育てる予定が場合は、製粉機の購入を検討するとよいと思います。
私は、『粉エース』(価格:5万前後)という製粉機を購入しました。
とても便利でした。
必要な肥料・消毒液
- 稲わら(堆肥)
- 消石灰
- 化成肥料101010
- 窒素(硫安)
- 種子消毒液
- 赤カビ対策の薬
稲わら
微生物を増やし、麦の生産性を高める役割があります。
ない場合は、農協やホームセンターで売られている堆肥を使います。
消石灰
土壌改良するために使用します。
酸性の土地では麦は育ちにくいので、アルカリ性の消石灰を撒くことで中和させます。
種まきの2週間前に撒きます。
肥料と同時に使用しないでください。
注意!消石灰は、アルカリ性のため目に入るととても危険です。
取り扱いに注意してください。
化成肥料10-10-10(じゅうじゅうじゅう)
麦が育つ際に、無機養分が必要となり、土壌からこれらの養分を吸収します。
土の養分が減少するので、肥料で補う必要があります。
そのために撒くのが化成肥料です。
10-10-10は、窒素・リン・カリが全重量の10%含まれている肥料です。
私は、10-10-10を使用しましたが、一般的に使いやすいのは、8-8-8です。
種まきの1週間前に撒きます。
窒素
稲わらを撒くことで窒素が欠乏するので、補う必要があります。
窒素には、
- 石灰窒素
- 硫安
があります。
石灰窒素は、価格が高く、ガスが発生するので使用に手続きが必要になります。
硫安は、お手頃で使い勝手が良いので、小規模で栽培する場合は硫安で十分です。
種子消毒液
麦類の種子は、伝染性の病害があり、もし発病すると品質が低下します。
種子消毒は、病害を予防するために必要となります。
種子の消毒液は、農協で購入することができます。
私は、『ベンレートT水和剤20』を使用しました。
赤カビ対策の薬
小麦の代表的な病気は、『赤カビ病』です。
麦の穂が出た頃に、撒く必要があります。
農協で購入することができます。
使用する際は、薬が体に触れないように対策をしてください。